■ハーフエルフ
なにげないひと時。
イギリスはハーフエルフである。
エルフといえど、人外とあからさまにわかる美貌ではなく、どこにでもいる普通の子供だ。
詳しく言うなら、各々のパーツは見栄えがよくまたバランスも整っている、長じれば美人になりそうな、普通の子供、である。
それでもパッと見、どことなくねぼけた様子にみえるのは、そのボサボサの眉毛のせいだろうと、フランスは考えていた。
ひょっとしたらそれを考えての上での放置なのかもしれないが。
――…大きな新緑色の瞳も、あまやかな桃色の唇も。随分とかわいいのだ、けれども。
「なに、じろじろみてやがる」
内面はちっともかわいくねぇ。
不機嫌そうに、人間のものよりも長いとがった耳(唯一、彼が人ではないと示すものだ)がピクピクと動いている。
耳で表情をあらわすとか、お前は動物か。
「お前さぁ、ほんっとう、かわいくないよな」
「お前に可愛いといわれても鳥肌がたつだけだが、そこまで言われるとムカつくな」
睨みつける目からは子供っぽさの欠片も見当たらないが(戦場ならばいっそ恐怖を抱かされるぐらいの)、フランスの意識はハチミツ色の髪に向けられていた。
子供独特の柔らかな毛が風にゆられてふわふわと動いている。
気付いた時には、手を伸ばしてぐりぐりとなでていた。
「――な…っ!!」
思ったとおりの柔らかな感触と、子供らしい表情に頬がゆるむ。
「な、なにすんだ、へんたい!」
真っ赤な顔で変態と言われようが、全然むかつかないんですけど。
とは、口には出さないが。
緩む頬は抑えられない。
たぶん、フランスよりもずっとずっと年上なのだろうが、今のイギリスはただの子供に見えた。
「まぁ、いいじゃん」
ただ思うがままの表情で、素直にそういえば、イギリスが固まるのがわかった。
彼は、素直に愛情を示される事にまったくといいほど慣れていない。
まぁ、たまにはいいだろうさ。
そのまま、ゆっくりとなでつづける。
本人にとっては、いっそ嫌がらせに思えるのかもしれないが。嫌がって逃げないのだから、かまわないだろう。(かたまってるだけ、ともいうが)
たまには、こんな日があってもいい。
ヴェネチアーノが「ずるい~!おれも!」と紛れ込んできて、さらには彼に引きずり込まれたドイツやら、何故かいつのまにかいたオーストリアやらハンガリーやらまで混ざって、羞恥に耐え切れなくなったイギリスが爆発するのはすぐ後のこと。
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