その2
「よう、いらっしゃい」
イギリスを迎えた男は、グレーのシャツにハーフエプロンというシンプルな格好だったが、酷く様になっていて憎たらしい。
「ぉう。・・・悪いな」
「なに、珍しく殊勝じゃね?」
「るせぇ」
笑って、フランスが半身を動かす。中に入れ、ということだとわかっていたがイギリスの足はすくんだ。
「イギリス?」
「・・・この間の、アンスリウムの礼」
震える手を隠して差し出した花束はフロックス。
あくまでこの間の礼という風を装って、ひっそりと賭けた。
「なぁ」
一瞬降りた沈黙を破りフランスの声が響いた。
「・・・なんだ?」
「お前、意味、わかってる?」
思わずフランスの顔を見つめれば、恐ろしいほど真剣な目をした男。
なにがだ、と返したくなって、しかし言葉を飲み込んだ。
ここで、負けるわけにはいない、なんていう意地で。
「お前こそ」
まっすぐ睨みつけてやれば、ぐい、と花束をもつ手ごと引き寄せられる。
バタリ、とドアが閉まる音と、花束が落ちる音が同時に響いた。
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