その3
壁に押し付けられ。
深く深く唇をまさぐられて。
「っ」
あげくシュルリと聞こえた衣擦れの音に、ビクリと身体が震えた。
「ちょ、まて・・・!」
「やだ」
切れ切れになる息の合間、唇を引き剥がして訴えれば一刀両断にされ、深く抱きしめられる。
「おまえ、いきなり、ってどういうことだよっ」
「わかってるけど、やだ」
フランスの唇は忙しなく、イギリスの首筋をたどり、時折きつく吸い付いた。
「やだってお前!」
「だって」
ギリギリと力を込めて、フランスの体を引き離しても、彼の腕は往生際悪くイギリスの腰を抱えたままだ。
「ずっと、お前に触れたかった。ずっとお前とキスしたかった。いつだって」
むっつりと、いっそ不機嫌に落とされる言葉なのに、それでもイギリスの頬に熱がのぼる。
「お前だけ・・・触りたかったんだ。もう、我慢・・したくねぇよ」
なぁ、と囁かれば。
もうどうしようもなくて。
「せめて、ベッドにつれてけ」
精一杯の矜持で不機嫌を装ってそれだけ言えば、昔に比べれば随分と力の落ちたはずの男の腕がイギリスを抱えあげ、足早に歩き出していた。
「おま、え」
どさり、と落とされたベッドの上。すぐさまのしかかってきた男を睨みつける。
「ああ、悪い。お姫様だっこはそのうちな」
「されたくねーっ」
肩の上に担ぎ上げられるという不自然な体制で圧迫された息を吐き出しつつ睨みつけるが、フランスはそれ以上ノってこなかった。
ただ、きっちりと着付けられたイギリスのスーツを崩しにかかる。
いつもと違うその態度に不安になったところで、肌に触れた手が震えていることに気づいた。
「・・・っ」
「わらうなよ」
必死なんだよ、と独白のように落とされた声に反応する余裕はすでにイギリスの中からも掻き消えていた。
ようやく、フランスに求められている実感が沸いたからだ。
かぁぁ、と上る熱をごまかしようもなく、まだ冷たいシーツに頬を押し詰める。
「いぎりす?」
熱い声にフランスも興奮しているのだと改めてわかって、羞恥と嬉しさにきつく目を瞑った。
「なぁ、・・・いい?」
震える手。かすれた声。
それでも、戸惑うようにかけられた声に、フランスも不安だったのだと、気づく。
「・・・もう、俺の言葉は渡した」
僅かな間の後、服を剥ぎ取る勢いで動き出したフランスの手に、童貞かよと笑ってやろうとして、自分の喉が引きつれていることに気づいて、やめた。
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