Cさんのお宅の絵茶貝にて。(ある意味間違ってないからこのまま)
ハンガリーさんを囲むスペ&ロマから話を捏造したもの。
完成後画面で繰り広げられたミニ話だと、違う展開ですが、他とのリンクの都合上無理矢理捻じ曲げさせてもらっていま、すorz
いつだって、ロマーノにスペインの気持ちはわからない。
そして、スペインもまた、ロマーノの気持ちを知らないのだと知っていた。
さんさんと輝く太陽の光を浴びたトマトはまるで赤い宝石のようだ。
のびのびと腕を伸ばす潅木の陰に座り込んで、太陽を見上げる。
まるで、スペインのようだと思った。
おおらかに人々を受け入れ、けれど時としてその恵みすら刃とする。
根本的に人のことを考えていないあたりそっくりだ。
プツリと実を一つもぎ取って口に運ぶ。
酸味と甘みが口の中に広がって、乾いた喉を潤した。
太陽の恵みを力として育つトマト。
けれど、その恵みがすぎれば枯れおちる。
太陽とそしてそれにより廻る水により大きく左右されながら生きる存在。
まるで俺みたいだ、とロマーノは思う。
スペインの保護国として生きる自分。
彼なしにはきっと存在することはあたわない。
ためいき一つ落として、トマトの幹に寄りかかる。
きつすぎる太陽の日差しは和らいで、穏やかにロマーノを包み込んだ。
「ちくしょー。スペインのばかやろー・・・」
目を瞑れば、さっきの喧嘩が頭をよぎる。
スペインのためを思ってしたことは、彼に伝わらず怒られる原因となった。
いつだって、ロマーノの気持ちはスペインに伝わらない。
スペインの気持ちもわからない。
憂鬱な気分のまま目を閉じれば、いつのまにか、眠ってしまっていた。
*
*
気づけば、夕暮れ。
真っ赤な夕日が熟れたトマトのように紅い光を放っている。
濃くなった影の下を抜け出し、空を仰ぎみれば、スペインの顔が思い浮かんだ。
追いかけてもこない酷い男だ。
・・・いいや、違う。
喧嘩して家を飛び出たとき、彼は正装していた。
たぶん、城にでも行かなくてはならない用事があったのだろう。
「スペインのばかやろー」
小さくつぶやいて、落ちる太陽を睨みつける。
「ロマーノ?」
幻聴まで聞こえるとか、どれだけ傾倒してるのか、と、苦々しくため息を落とす。
「なんや子供らしくないなぁ?」
笑いを含んだ声。幻聴なんかじゃない。
あわてて振り向けば、満面の笑顔。
「ロマーノただいまぁ」
「す、スペイン?」
おう、と答える声はたしかにスペインだ。
「な、なんでいるんだ?」
「なんでって・・・迎えにきたにきまっとるやん?」
微笑む顔に、別れの前の怒りはどこにもない。
怒りの持続しないおおらかな男だから、であって、ロマーノの気持ちを酌んだからではない。
わかりきっているのに、ぎゅぅと胸が締め付けられる。
「どないしたん?ロマーノ」
絶対何も考えていないとわかっているのに。
苦しくて。苦しくて。
いつのまにかホロリと涙がこぼれた。
「ど、どないしたん!?ロマーノ」
慌てた声。
心配されているのだとわかって、止まるどころかもっと涙があふれてきた。
「スペインのくのやろぉー・・・っ」
全部スペインのせいだ。
こんなにも自分の心は彼に占められている。
「なんねん~・・・」
やっぱり、わかっていない。
ロマーノの気持ちをちっともわかっていない。
「すぺいんのばかやろー」
泣きたくもないのに、こぼれる涙。ひくり、と引きつる喉。
ああ、もう。ああもう。
「すぺいん、なんか 」
だいきらいだ
「・・・ごめんな?ロマーノ」
いいかけた言葉は、抱きあげられたことによって消える。
「かえりがけになぁ、ハンガリーちゃんにおうてん。なんとなく昼間の喧嘩の話をしたら、めっちゃおこられてなー。正直俺にはよう、わからんかってん」
けど。と彼は続ける。
お前の泣き顔見るまで、そこまで追い詰めてたなんてちーっとも気ぃついてなかったことは、わかった。
ごめんなぁ?
ぎゅ、と抱きしめられて、またひくりと喉がひきつれた。
「かえろ?」
罵声とか、やっぱりわかってないんじゃないか、とか、いろいろ言いたい言葉があったのに。
すべて、腕の温かさに掻き消えて。
ただ、こくりとうなずいた。
帰り道、スペインはずっとロマーノを抱えていてくれた。
***
長い長い帰り道のあと。
二人を出迎えたのはハンガリーの笑顔だった。
「仲直りしたのね」とロマーノの頭をなでた優しい手に、ロマーノの頬がほんのり赤らむ。
天性の女好きやなーと、うっかり悪友の顔がうかんできてしまい、ロマーノの将来が心配になったスペインだ。
「そや、ハンガリーちゃん、わざわざこっちに来るとか、なんや用があったんとちゃうん?」
「あ、そうそうトマトを分けて欲しいな、って思って」
「どうぞどうぞ。仲直りの手助けしてくれたお礼や、好きにもってきー」
「ありがとう」
にっこりと微笑む顔はずいぶんと綺麗だと、そういう機微に疎いスペインですら思う。
オーストリアはおいしいとこどりやなぁ、と自らの身を省みて、思わず遠い目をすれば、くい、と手を引く感覚。
「スペイン。倉庫からトマトもってくるの手伝えよ」
かわいい女の子にはいいところを見せたいのか、どこか一生懸命なロマーノを認めて、女好きめ、と苦笑いが浮かぶ。
「はいはい。ハンガリーちゃん、ちょぉまっててなー?」
ハンガリーのように、かわいらしい女の子ではない。
イタリアのように、家事をまっとうにしてくれるわけでもない。
それでも、やっぱりスペインにはかわいい子分だ。
「よっしゃロマーノ倉庫まで競争やでーっ」
「ひ、卑怯だぞ、すぺいん・・・!」
さまざまな国がそうであるように、いつかはこの手を離れていってしまうだろう子供。
だから、今はただ笑いあって過ごしたい。
願わくば、いましばらくこのままで。
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