英視点と対になっています。
ぱらぱら。
ぱらぱら。
光の雨が降りそそぐ。
さすがは、日本。と、内心感嘆のため息を漏らした。
最近は球体の技術が各国で発達してきたとはいえ、やはり花火といえば日本というイメージが強い。
最近仕事が立て込んで忙しかったが、わざわざ極東まで足を運んだかいがあったというものだ。
ちらり、と隣にたつ、同じく仕事が立て込んですさまじく忙しかったはずの男を見やる。
目を細めて空を眺める様は、妖精だかなんだかと戯れてるときと同じで、ひどく気安い雰囲気を醸し出していた。
ドン・・・と音がなり、ぱらぱらと光の粒が舞い散る。
照らされた顔は、不可思議な陰影をつくり、ゆるく弧を描いた口元やら、穏やかな表情をいっそ甘くみせていて。
ほう、とため息が漏れた。
「・・・きれいだな」
自覚しないままに、つぶやいていた言葉に、内心狼狽する。
「そうだな」
幸い、花火だけをみていたイギリスは、それを夜の華に向けての言葉と解釈してくれたようで、珍しく素直な言葉が返された。
それに、ホと息を吐き出し、これ以上なにかを口走ってしまう前に、空へ顔を戻した。
ぱらぱら。
ぱらぱら。
したたりおちる光の雫。
『風流』とはこういうものをいうのだろうか、と内心考える。
絵や彫刻などの形に表しずらいものだ。
ドォォン
―――――― パッ
青、赤、白。
それはまさしく自国を表す色なのに、なぜかイギリスの色だと思った。
円状に舞い散る光が、かの旗を思い浮かばせたのかもしれない。
ぱらぱらと音を立てて、はじける光の粒に、心が揺れる。
いぎりす。
と、心のうちでつぶやいた。
イギリス。
強く彼を意識して、視線を向ければ、その顔が自分の方をむいていることに気づいて、なぜか胸がしめつけられた。
「どした?」
「な、――なんでもねぇよ」
彼は、一瞬の狼狽をみせたあと、すぐに顔を空へと向けてしまった。
ドンという音に、花火が打ち上げられたのを知ったが、イギリスから視線をそられなかった。
フランスの見守る先で、男は夜空を見上げながら、ほう、とため息をもらす。
赤、青、白の華をみて、イギリスは何をおもうのだろうか。
「――なぁ」
「なんだ?」
――なに、考えてる?
なんて、そんなこと、言えるはずもない。
そもそも、そんなことを考える自分がおかしいのだ、といまさら気づいた。
「――・・・いや、なんでもない」
「・・・そうか」
これは、真夏の夜の、夢。と。
自身につぶやいて、フランスは、顔を夜空へと向けた。
--------
アメリカ、なんていわれたら。
いわれなくても、そう考えていたのだとわかってしまったら。
きっと、後戻りできない道に進んでしまう。
そんな気がした。
PR