にょた英と仏と米 米→英
その体は存外小さかった。
男の腕の中にすっぽり納まってしまうほどに。
何故、その身を抱きしめる体が、自分のものではないのか。
ただ、アメリカはそれだけを漠然と思った。
***
課外の調べ物で、図書館にいたときのことだ。
地面がグラリとゆれ、そここで物の落ちる音が聞こえた。
「―― っ」
小さいわけでもないが、大きいわけでもない揺れに、不安定な位置に置かれていた本が落ちたのだろうとあたりをつけつつ、アメリカは頭をかばっていた腕をどけた。
本が落ちる瞬間、小さく聞こえた悲鳴が気になって、落ちた本はそのままに本棚の裏に回る。
気のせいでなければ、あれはイギリスの声。
「いぎり・・・」
大丈夫かい?と言いかけた声は、意識せず喉にこびり付いてその動きを止めた。
目の前には、イギリスをかばいその腕に抱え込んだフランスと、その胸の中、本を抱えたまま立ち竦んでいるイギリス。
もう揺れは収まってるんだけど。いつまで抱きしめてるんだい?
そんな言葉が頭を流れる。
流れて止まらないが、形にならない。
フランスは色男だが、体格がいいわけでも、上背が特にあるわけでもない。普通の男の体だ。
その腕の中に、イギリスはすっぽり納まっていた。
あぁ、あんなに細かったのか、といまさらのように認識する。
「・・・あー・・・びっくりした」
低くフランスの声が響いて、時間が動き出す。
「い、いつまで抱きしめてんだばかっ」
「おまえそれが間違いでも守ってもらった相手に言う言葉?」
「間違いってなんだよ、間違いって!」
「だってお前女子の制服きてんだもん。うっかりかばっちゃったじゃん」
「着てちゃ悪いみたいにいうなー!女だ、女!いいから離せ!」
「視点そこなのかお前。どうでいいけど――・・・っ」
イギリスの体を話した瞬間、フランスが低く呻いた。
「・・・っやっぱり、本が肩かどこかにぶつかったんだな」
「気のせい気のせい」
「気のせいじゃねーだろ、ヘタレっ」
「だからそれが間違いでも」
会話がめぐったところで、アメリカはきびすを返しその場から離れた。
どうしても、二人の間に入り込む気分になれなかったからだ。
「別に、あ、あああありがとうとか、おもっちゃいないんだからな!」
イギリスの怒鳴り声が聞こえたが、バカだな、とは思わなかった。
なんでそれを言われるのが自分でないのか。
―― どうして、悲鳴が聞こえた瞬間に飛んでいかなかったのか。
ただ、それだけを考えた。
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無意識下で、頼りになる存在としてしかみてなかった、アメリカ。
女の子だといまさら認識。
仏英モードどでみると、すれ違い両思いの二人。うっかり、そのまま強く抱きしめそうになって自制かけたフランス兄ちゃんとかどうですか。
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