その4
半端に服を脱がされ。
そここにくちづけられて。
おそらく半端な愛撫だというのに(他に経験がないからわからないが)、それでもイギリスの身体は燃えた。
じかに快楽の元を握られれば、どうしようもなく感じて、ビクリと身体が跳ねる。
「・・・くそ」
舌打ちとともに落とされたうめきはフランスのもので、目を開けて見上げれば、フランスの青い目とかちあった。
いつもの色よりずっと深いそれに惹かれて、思わず手を伸ばせば、ひたりと汗ばんだ手に目を覆われた。
「みんな。・・・ますます欲しくなるだろ」
すれた声とともに、ぐり、となにかが押し付けられたのを感じる。
ぐりぐりとゆすられて、ソレがフランスのだと気づいて、かぁと身体の中心が熱くなった。
自然揺れだした腰を止められずに、ただ二人の熱い呼吸の音だけが部屋を満たしていく。
「っ」
イイところをこすられて、思わず息を詰めれば、ひくりとフランスが震えたように感じた。
「ココ?」
かすれた息で男が笑うが、罵ってやるほどの余裕はない。
ないが、悔しいから自分も手を伸ばして握れば、簡単にフランスの息が乱れた。
鼻先で笑えば、
「こ、の」
と、呻くような声とともに、特に感じるところだけを重点的に攻められる。
(余裕ないようにみえて、しっかり人のポイントおさえやがって)
落とされるのはしゃくで、フランスにやり返すのは昔からの流れどおりで。
手加減なしに交わされたそれに、二人ともすぐ陥落した。
「な・・・」
「なんだよ」
ぐりぐりと、イギリスの肩に額を押し付け、情けない声を出すフランスを横目で眺める。
彼の指は、イギリスの尻の中に潜り込み、イギリスのすべてをあばこうとしているのに、その声はなんだ。
「俺さ。百戦錬磨なわけよ。女ももちろん男も」
「お前は俺に喧嘩を売ってるのか」
なにをわざわざ言い出しているのか、このバカは。
「男とか、最近は特に、誰でも気持ちよくできる自信あんだけど」
「おまえ、指抜け」
こんな状況で、自慢だかなんだかされれば言って当然の権利だと思われるのに、それは「やだ」の一言で却下されて、イギリスの眉間にただしわが寄った。
「自慢じゃなくて、さ。本当のことなんだけど」
「まがりなりにも、ずーっとシたいと思ってた相手との情事にいうセリフじゃねぇな」
「だから。誰でも気持ちよくできる自信があったんだけど・・・ごめん。無理」
―― このバカは本当になにを言い出したのだろうか。
「・・・俺には、そんなの使う仲じゃないっていうのか」
「ち、ちがう、それは絶対違う!そもそも最近の男相手の脳内設定イギリスだしっ」
バカのセリフに、ふつふつと湧き上がっていた怒りがしゅるりと溶けて消えた。
あっけに取られている間に、バカ――フランスの言い訳は続く。
「はじめてのときとか、どうやったら気持ちよくなるか、とかいろいろ頑張ってたんだけど・・・・ごめん、俺、頭真っ白」
どうしよう?
苦笑いに近く、情けなく笑ったその顔に、完全にイギリスの心は落ちた。
意地を張る心も全部だ。
「・・・ばか」
ゆるやかにウェーブを描く髪をつかんでひきよせ、軽く口付ければ、丸く開いた青い目が見れて、それでもう十分だと思う。
「好きにしろよ」
ンなにやわじゃねぇよ、と囁けば、息を詰めたフランスの指がグリ、と強く動いて、今度はイギリスの息が止まる。
「っ・・・! て、め」
「おま、動揺させんなよっ 余計痛くなんぞっ?」
本気で動揺して、あわてているフランスに、これは早まったかな、とすこし後悔したイギリスだった。
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【フロックス】
花言葉は 「あなたの望みを受けいれます」
なお、7月14日(パリ祭・フランス革命記念日)の誕生日花でもある。
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