修羅場中書きなぐりss
修羅場の自分を励ますmy企画 「英にα波出してもらおう」
気づいたら、彼を抱きしめていて、アメリカは焦った。
そうなりかけたことは何度もあった。
酷く疲れたときはいつもそうだ。
そのたび毎に、多大なる自制心でもって腕を押さえ、かわりに手ひどい言葉で彼をからかうのがアメリカの中での通例だった。
けれど、今。
アメリカは、イギリスを抱きしめている。
自覚してなお、腕は力を緩めない。緩めてくれない。
自分の腕ではないかのようだった。
どうしよう。
いつものイギリスならば、真っ赤になって、そのうえ嬉しいのにその笑顔を隠そうとするものだからブサイクな顔になってしまって、アメリカはそれをからかうことによって距離を図ることができるというのに、こんなときばかり、イギリスは無言で抱きしめられている。
固まっているのではない、彼の肩に緊張はない。
むしろ、固まっているのはアメリカの腕だ。
どれだけそうしていただろう。
どれだけ互いの息遣いだけを、体温だけを、感じていたのだろう。
ようやく、アメリカの腕が動いた。
ぎしぎしと腕をひらけば、ゆっくりと瞼を開きアメリカを見つめてくる新緑の瞳。
なにをいっていいのかアメリカにはわからない。
どう距離をとっていいのかわからない。
「紅茶でも飲むか」
ぽん、とアメリカの背をたたき、イギリスが体を離した。
こんなときばかり、彼はいい男ぶる。
うん、とうなずきかけて、それでも、ギリギリの理性で「嫌だよ」と拒否した。
ここで甘えれば酷く心地よいのはわかっているが、我に返ったとき死にたくなるだろう。
酒に酔った翌朝のイギリスのように。
イギリスには、甘えられないのだ。絶対に。
そう決めたのだ。過去の自分が。
そして、今の自分も。
「コーヒーなら・・・といいたいところだけど、君のところまずいからなぁ!」
「お前なぁ・・・!今、うちじゃコーヒーブームなんだぞ!?」
ほんの少し、本音を混ぜて。
うん、本当は君とお茶をしたいのだけれど。
こんな状態で、二人きりなんてなったら、俺の決めたことがたやすく覆りそうだから。
「日本のところで美味しいご飯を食べることにするよ」
にこやかにそういえば、彼はほんの少し傷ついた顔をしてそれでも、そうか、といった。
そんな君が嫌いだよ。
俺が疲れていることを知っていて、俺がこれから日本に甘えに行くことを知っていて、それに傷つきながら、それでもいいと本心から思ってる君が。
「じゃぁね、イギリス。邪魔をして悪かった」
君のなかで、いつまで俺は『弟』なんだろうね?
そう心の中でつぶやいて・・・つぶやいてしまったことに、苦いものを感じる。
あぁ、本当に疲れている。
わざわざそんなことを無意識にでも思ってしまうなんて。
はやく、日本にいって、ワビサビの世界でゆっくりしよう。
「See you」
ひらり、と手を振って、イギリスにさよならをした。
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俺は、いつまで君にすがりたい気持ちに耐えればいいんだろう。
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