今日も今日とて、カイコさん宅の絵茶にまぎれてます(明日もいくんだぜっ)
二人きりの時間が長かったので、お題を出し合ってみた。
私のもらったお題は 「【実は女】設定の英」「日とお茶会。仏乱入」でした。
■日とお茶 仏乱入
イギリスが女だということが世間に知れて早幾年。
随分と、女らしくなったものだと、イギリスとのお茶を楽しみながら日本は思う。
彼・・・もとい彼女は、自分から女らしくしようと思っているわけではないのだろうが、ずっと気負っていたものがなくなったせいか、随分と表情はやわらかになった。体も、少年と錯覚させるほど性別を感じさせないものだったのが、まろみを帯びてきていることに本人は気づいているのだろうか。
(いないでしょうねー・・・)
いたら、妙に恥ずかしがってもっとしっかりと着込んでいそうな気がする。
もっとも、ゆるやかな曲線を描く首筋とか、細い手首とか。
いくらタイや手袋で隠そうが、ふっくらとした唇や、まろい頬は隠しようもないだろうが。
「どうした?日本」
「なんでもありません」
すこし視線がぶしつけになってしまったようだ。
得意のあいまいな笑顔でごまかせば、ことりと首をかしげるイギリスは、酷くかわいらしかった。
さらりとゆれた金の髪が淡く光をはじく様が美しい。伸びた襟足から除く白い首筋がなまめかしいとは言えないので、
「ただイギリスさんの髪は綺麗だなァと見ておりました」
と、前半だけを口にしてにこりと微笑めば、瞬きの後さっと頬が赤らんだ。
女らしくなったといえば、むきなって否定をするだろうが、そういうこととは関係ない、たとえば直接国土に関することを褒めれば、イギリスは素直に照れる。
そんなことはわかっていない弟と、わかっていても口には出せない腐れ縁には決して見ることができない姿だろう。
「日の光に透けて・・・蜂蜜みたいですね」
そんな真っ赤な顔で睨んでも、全然怖くないですよイギリスさん。とも口には出さない。
甘そうですね、とはもっと口に出さない。
「ほ、ほめても、なにもでないからな」
「美味しい紅茶なら、もういただいてますから」
あぁ、もう本当に可愛い。
褒めなれていない彼女は向けられた好意にどう対応していいのかわからないのだ。
それでも、ぷい、と横をむいて、小さな声でありがとうと呟いたのは聞き逃さなかった。
いいこに育ちましたねェ・・・
もはや、祖父と孫の心境であることは、日本自身うっすら気づいている。
むろん、口説いてかまわないといわれれば、喜んで口説く甲斐性もあるので、「今度は、イギリスさんの部屋で薔薇を見ながらお茶をしたいですねー」と言い出そうとしたそのときだった。
「紅茶はうまいけど、そのほかがなー」
ふいに、のびてきた手がイギリスのカップを取り上げ、その中身を奪った(わざわざイギリスと同じところに口付けたのを日本は見逃していない)。
「フランスさん」
邪魔をしやがって、とは思わない。なぜなら、「いきなりなにしやがる不法侵入者め」と、イギリスがそのしなやかな足でフランスをノしたからだ。
「こ、ここまでされると、今の、こっちのセリフでいいとおもうなー、お兄さん」
「うるさい。ドーヴァーに沈んでこい!」
イギリスの反応はにべもないが、それでもフランスは楽しそうだ。
きっと、イギリスの注意が自分に向いているからだろうと日本は推測する。そしてそれが外れていないだろう自信もあった。
(まったく、嫉妬してちゃちゃ入れるぐらいなら、いつものプレイボーイぶりを発揮すればよろしいのに)
ふ、とため息をついて、日本も自身の紅茶を飲み干す。
席をはずすつもりもないが、フランスとイギリスの邪魔をしようとも思わないのは、イギリス自身もその実フランスの来訪をよろこんでいるからだろう。
きっと腐れ縁の彼はわかっていないだろうが(それだけが唯一の救いだ)。
ちなみに、イギリスもフランスが楽しそうなことに気づいてはいない。
お互い、実に鈍いことだが、はたからみていると、いちゃついているようにもみえてうっとうしい。
「おじいちゃんはすねてしまいますよ~」
小さく呟いて、自らティーポットから紅茶を注ぐ日本であるが、鈍い二人をうっとうしくも面白くみているので、実は対してつまらくもなんともないのはイギリスには秘密である。
なぜなら、我に返ったイギリスがあわてて日本をかまうだろう(そしてフランスを放置するだろう)ことが、今の日本の一番の楽しみだからだ。
柔らかな日差しと、漂う紅茶の香りと。
それに不釣合いな罵声と。
暫くは穏やかな時間が過ぎそうだった。
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